新規事業を生み出せるマネジメントが両利きの経営を制す

グロースハックスタジオ広岡です。皆さんは『両利きの経営』をご存知でしょうか?

スタンフォード大学のオライリー教授が書かれた本で、2019年2月に日本語版が発売になりました。

変化の激しいデジタル時代の経営はこれまでの「知の深化」だけでなく、「知の探索」を行いながらイノベーションを起こし続けることこそが持続的な経営を可能にするということで、実際の進め方や各種ケーススタディを紹介している書籍になります。

両利きの経営の解説をご担当者されている経営共創基盤の冨山代表が先月上梓された『コーポレート・トランスフォーメーション』も合わせてお読みいただくと、両利きの経営が必要となった日本の背景や歴史、また具体的な方法論を吸収しつつ理解を深めることができます。

今後の経営の方向性に対して非常に示唆深い内容となりますので、未来の経営レイヤーの方には特に必読な書籍ではないでしょうか?

さて今回のBlogですが、この両利きの経営成立に必要となる「知の探索」を可能にする組織的ケーパビリティの切り口として、グロースハックスタジオが提唱している「新規事業創出を可能にするエコシステム」をご理解していただくこともお力になれるのではないかと思い、解説記事をアップしてみます。

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既存事業と新規事業は何が違うのか?

最初に新規事業と既存事業の軸、またどういうステージが存在するか?という部分の目線を合わさせてください。新規事業創出をプロセス化するにあたり、この部分の共通理解が根本になりますが、実態として現場と経営の間でGapが生まれているケースが散見されます。

まず、こちらをご覧ください。

既存事業と新規事業を「市場解像度」、「事業モデルの強度」で軸を取り、3つの事業ステージを設定しています。

軸について

市場解像度は事業が所属している市場の骨格への理解度と捉えてください。主に以下観点に対する解像度だとご理解いただければよろしいかと思います。

  • TAM / SAM / SOM(市場の理解)
  • 既存の競合他社(供給の理解)
  • 既存のユーザー(需要の理解)

※TAM SAM SOMはキープレイヤーズ代表取締役の高野氏の解説記事をご参照ください

次に事業モデルの強度です。解釈としてはビジネスモデルの再現性と捉えてもらっても構いません。

こちらは以下観点に対する実態で説明が可能です。

  • 自社事業がモデル化されているか否か
  • モデル化されたものが定量で計測されているか否か
  • モデルを運用するためにチーム化され、各KPIが再現しているか否か
  • 自社事業モデルと、競合の事業モデルの差分が無いか、または在るか

例えば石油メジャーのガソリンスタンドモデルや、食材通販会社の宅配モデルは市場解像度が高解像度で、事業のモデルも強固な状態にありますので既存事業と捉えらえるというイメージです。

3つの事業ステージ

事業ステージは3つに分けています。

見出しは「既存事業と新規事業の違い」としておりますが、一般的に使われる新規事業という単語の中には、目的も活動内容もプロセスも変わる2つのフェーズが混ざり合って使われているので分離して3つのステージで考えてあります。

  • シードプロジェクト:事業モデルの探索ステージ
  • スケーリングプロジェクト:発見した事業モデルの成長ステージ
  • 既存事業:競争優位を確立しながら競合に勝ち続けるステージ

シードプロジェクトは、顧客や市場のAsIs(現状と問題)と顧客や市場のToBe(あるべき状態)を探索する状態にいるので、市場解像度も事業モデル強度も骨格ははっきりしていないケースが大半です。もちろん自分の中のイメージとして切り取れている可能性はありますが、定性定量の両側面での市場や事業モデルへの説明が十分できる状態にはいない、すなわち「事業モデルを決めて、組織化して、投資を強くかけられる状態にいない」ということで、シードプロジェクトとして設定しています。

スケーリングプロジェクトは、新規事業の中でも後半ステージになっているプロジェクトのことです。競合についての情報が少なく、自社の顧客数は多いわけではないので強度は不明ではあるものの、最低限の事業モデルの仮説通りの再現性が見えてる状態。また市場規模についても、TAM/SAM/SOMとはっきりは説明できないけどどういったパラダイムの変化に沿った市場を攻めているのかといった視点で解像度は上がっている状態ということで、スケーリングプロジェクトとして設定しています。

最後に既存事業は軸の説明の通りこれらの観点がクリアになっていて、重要な論点が競合との勝ち負けになっているプロジェクトになります。

各ステージ毎の目的や制約の整理

最後にまとめの意味を含めて、各ステージ毎の観点を比較できるように一覧にまとめてみました。

両利き経営を達成するために必要な組織のケーパビリティ(能力)としてこの3つのステージをコントロールにできるようになっておかなればなりません。

既存事業の目的とは「顧客の課題を解決する」ことでも、「価値を提供すること」でもなく、その重心は「営業CFを稼ぐこと」にあるという自覚をステークホルダー全体に浸透させていく努力が必要です。そしてその浸透度が新規事業の失敗からの学びを得やすいマインドセットにつながります。

またスケーリングプロジェクトは未来のコア事業の創出が目的です。前回のBlogでスタートアップエコシステムのゴールは10年以内のエグジット(IPO or M&Aによる売却)である旨說明しましたが、新規事業は中長期にキャッシュを生み出してくれる事業、すなわちコア事業の創出がその目的であることはプロセス設計上、重要な論点になります。

2つのポートフォリオ・マネジメント

さて、ここまでの話で新規事業のプロセスの話をする前提の目線が整いました。ここからは一歩具体的に新規事業マネジメント上に発生している問題について考えます。

スタートアップ企業と違い企業内部で行う新規事業の場合、1人の人間がスコープに対する意思決定と投資の意思決定をしていくことが難しく、投資を管轄する経営と、事業開発を行うプロジェクトの間で合意を得ながら進めなければならない制約があります。

※初期のスタートアップは資本を1人に寄せるなどして、この問題に陥らないように設計します。

ここで注目すべきは、新規事業創出プロジェクトの進め方や手法は、リーンスタートアップ、ジョブ理論、当社が開発しているTHRUSTER(スラスター)など数多く生まれ、様々なプロジェクトから学び得てプロセス自体のカイゼンが進んでいるにも関わらず、新規事業投資の観点では具体的な方法論やフレームワークがあまり知られていませんし、カイゼンもそこまで進んでいません。

その結果、「現在の経営が利用している投資マネジメントは既存事業はマネジメント可能でも、新規事業をマネジメントできるプロセスになっていない」というのがほぼすべての企業に当てはまる課題ではないでしょうか?

既存事業の投資マネジメントとは

それでは具体的に話を進めます。まずは既存事業への投資をどのように管理しているかを考えてみましょう。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)というフレームワークをご存知でしょうか?1970年代にボストン・コンサルティング・グループが提唱した自社製品を4象限にはめて管理するためのツールになります。一番良く使われているポートフォリオマネジメントフレームワークなので見たことがある方も多いと思います。

出典:起業.tv

PPMを少し説明すると、市場成長率、市場占有率の軸で作られている4象限で、例えば市場成長率が低く市場成長占有率が高い事業は、競争も落ち着いている環境でマーケットシェアが高いということで利益が出やすい状態、すなわち金のなる木(キャッシュカウ)に位置づけられます。

利益率の高い金のなる木だけを保有すればよいという短期的な視点によって、プロジェクトが偏りすぎて中長期の仕込みが疎かにならないように見える化するには非常に使いやすいフレームワークなのですが、1つ問題があります。PPMの軸にどちらも市場とある通り、そもそも市場の解像度が高い事業でないと定義しづらく、市場が表現できないシードプロジェクトを管理するためのものではありません。

これまで会社の事業を全てPPM当てはめて考えようとした結果、歴史のある既存事業は関係者でその取扱を合意できるのに対して、新規事業を花形や問題児に当てはめた結果、人によって捉え方がバラバラで全員の意見を統合するのに悪戦苦闘したことがある方は1人や2人ではないと思います。

新規事業の投資マネジメントとは

それでは具体的に新規事業はどの軸で管理していけばいいでしょうか?

上述した通り、新規事業の目的は定性的には未来のコア事業創出ですが、定量的に表現するならばキャッシュフローが生み出せる状態になります。

一定のキャッシュフローが生み出せる状態というのは、スケーリングプロジェクトの何処かのタイミングにきますが、その頃には最低限の市場の解像度と、一定の事業モデルができ上がっていることになります。ということで、新規事業のポートフォリオとは一定の再現性をもってキャッシュフローを生み出せるプロジェクトを目指す過程を管理できる切り口が妥当になります。

そこでグロースハックスタジオは、市場の不確実性と、技術の不確実性でプロットするOppotunity Protfolioでの運用をおすすめしています。

元は、THE ENTREPRENEURIAL MINDSET(邦題:アントレプレナーの戦略思考技術)の中で紹介されているポートフォリオフレームワークです。縦軸に技術の不確実性、横軸に市場の不確実性で構成されおてり、原案はもう少し複雑になっていますが当社ではシンプルにこの4象限で捉えるようにしています。

両利きの経営全体の投資管理とマネジメント方法について

ここまでの内容をまとめるとこのようにモデル化できます。

この2つのポートフォリオの運用こそがこれからの経営であり、両利きの経営を具体的に運用するためには、経営企画がこの仕組みをリードしていかないとプロセスとして組織に根付かすのはなかなか難しい印象です。

結局組織としての強さの向上に近道はない

いかがでしたでしょうか?

両利きの経営を成立させるには、未来のコア事業を生み出せるケーパビリティが必要であることはご理解いただけたかと思います。しかしここで說明したようなシステムを社内にインストールさえすれば、そのプロセスは有効化されるわけではありません。

最後に当社が考えると、新規事業創出を可能にする組織レベルの概要図を張っておきます。

何か参考になれば幸いです。

無料ウェビナーのお知らせ

最後に無料ウェビナーのお知らせです。

2020年8月12日(木)15:00から、このBlogの内容をベースにした無料ウェビナーを開催します。

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