先端企業に学ぶ最新の社内スタートアップ成功のイロハ #1レポート1

2017年7月10日

こんにちは、GHSの手塚です。

4月21日に実施しましたグロースハックスタジオ主催の勉強会「先端企業に学ぶ最新の社内スタートアップ成功のイロハ #1」のパネルディスカッションの内容を数回に分けて公開していきたいと思います。

「先端企業に学ぶ最新の社内スタートアップ成功のイロハ #1」では、登壇者としてアドウェイズ社の山田氏やリクルートホールディングス社の細野氏、DeNA社の若宮氏をお招きし、各社で新規事業をどのようにはじめているのか?またはじめたときにどのような障害が発生し、その障害をどのように乗り越えていくのかについてパネルディスカッションをして頂きました。

今回はその中でも新規事業での「組織編成」や「領域の選定」、「計画の作り方」についてまとめた記事になります。

トピック

  • 新規事業は2パターンに分けて組織編成を管理
  • 思いを持てないと突破できないので、やりたいことをやったほうがいい
  • 計画は上の立場の人が責任を持って書く

新規事業は2パターンに分けて組織編成を管理

広岡:今日のテーマ、最初は組織ですね。要は、新規事業をどうやって会社としては取り組むべきかと。ここで1個出しているのは、新規事業をやるそもそも専門部隊をつくってやるべきか?このへんをちょっと管理者の立場だとか、現場の立場でどうお考えでしょうか?まずは、まさに今このへん管理をされている山田さんのほうから。

山田:そうですね。結論的には、僕らとしては新規事業だけを考えるためにつくる部署みたいなのは、持たないほうがいいんじゃないかなと思って、今やっていますね。

広岡:その心は?

山田:ベンチャー企業とかって言ってやっていると、カジュアルに新規事業をやりたい人がたくさんいて、既存事業をやるよりは新規事業のほうがかっこいいから、そっちに関わりたい人ってすごくたくさんいるんですよね。部署をつくるとそういう人が集まってくるので、できるだけハードルを上げて、あまりそういうのが起こらないような仕組みをつくろうと、いろいろ考えてやっています。

広岡:DeNAさんって、そのための専門チームがある印象ですが、いかがですか?

若宮:DeNAは新規を専門チームにするかはどっちもあります。既存事業とシナジーがあるような新規事業の場合は専門チームではなくその事業部内で開発してます。一方、新規専門部隊のタイプですが、この中にも2つあって、自動車とかヘルスケアとか領域を決めて事業部立てるやり方が一つ。もう一つは市場がまだないゼロイチの新規をリーンに試すやり方で、ここは領域で切るのではなく、新規メソッドに特化した専門チームという感じです。
私は専門チームが必要かは母体の企業のサイズによると思っているんですけど、基本的には母体が一定以上大きくなると母体とは違う論理が必要になるので、専門部隊が絶対に必要という風に思っていますね。

広岡:となると、今度聞きたいのはやっぱりリクルート。リクルートって各個別会社があり、さらにホールディングスがあるじゃないですか。そのうえで、NewRINGがあって、MTLがあってみたいな、一体誰がどうやって新規事業を、どうなっているの?という話がそこにあるわけですね。このへんって、どう理解すれば皆さんが自分の状態とうまくはめて考えられるかというところを、酔っ払う前に説明してください(笑)。

細野:もう酔っぱらっているんですけれど。しかも社内の人がいるからいろいろしゃべりにくい(笑)いろんな制度があるんですけれど、あれは会社のキャラとしてやっているところもあるので全部取っ払うと、よく社内で言っているのが、「飛び地領域」と「染み出し領域」という分け方をしています。飛び地というのは、もう既存事業シナジーがほとんどないようなところに、いきなりぼーんってぶっ込むやつを「飛び地領域」と呼んでいます。染み出しは、既存事業の売上をブーストするような新規事業を「染み出し領域」と呼んでいます。社内ではそれぞれを分けて会話はしています。

飛び地は専門部隊でいいと思いますし、評価軸とかも変えないと駄目なんですけれど、染み出しは既存のところと近くないと駄目なので事業部内でやりなさいみたいな、そういう会話をしています。

広岡:逆に言うと、各事業部って、要は自分たちの事業領域を持っているから、基本染み出し型になるのでしょうか?

細野:そうです。ただ、NewRINGとかいう仕組みで飛び地も考えてもいいとなっています。

広岡:NewRINGって、仮にキャリアの人が全然キャリアの領域関係なく新規事業案を出しても大丈夫なのでしょうか?募集領域があって、出したいところに出せばいいので、別に今の仕事に関係なくてもいいのでしょうか?

細野:大丈夫です。

広岡:このへんってたぶんやり方がいろいろあって、さっきの新規事業系の専門部隊でやるのに、そこに行きたがる若い子が増えるというのは、かなり想像ができる。じゃあ今度、同じ文脈だけれど、既存事業の中でどれくらいのリソースを使って考えればいいの?みたいなのっていうのは、どんなふうに捉えるんですか?

山田:さっきの話でいくと、先に箱をつくらないだけで、やるとなったら新規事業専門の部隊になるんですけれど、そのやるってなるまでにどうしているんだ、みたいな話かなと思っています。事業化が決定する前は、1週間に1回だけ担当者とミーティングを実施しています。一緒に考えて、ビジョンや方向性、戦略などを共有し、事業化案を昇華させています。事業化をするという決定をすると、僕の直轄の部署に異動してもらって、リソースを投下できるというような仕組みです。

思いを持てないと突破できないところもあるので、やりたいことをやったほうがいい

広岡:では次のテーマにいきます。新規事業の領域ですね。新規事業というのは、担当者がやりたいことをやるべきか、それとも会社としてテーマを持つべきかと。じゃあ、これは若宮さんからお願いします。

若宮 最後の最後思いを持てないと突破できないところもあるので、やりたいことをやったほうがいいところもありますね。ただ思いの方向性っていうか、その新規をなぜやるかっていうミッションとずれているとダメ。例えばドコモの時とかやっぱり最初から会社の売上に効くくらいの規模が求められるわけです。そこにゼロイチの新規だとコア事業が数千億ある時に1億、2億稼げても規模が小さいとなってしまう。なのでゼロイチではなく、ある程度市場がprovenなものをドコモのアセットを使ってどんって最初から立てれます!みたいな戦略じゃないと厳しい。

でも自分もそうでしたけど新規をやりたい人って、provenなものって二番煎じ、コピーキャットをやるのはかっこ悪いみたいなと感じがあったりして。オレがやりたいのは世の中にまだないイノベーションだ!みたいな。担当者はやりたいことをやりたいんだけど、ミッションに適ってないと会社としてこれをやっている意味はあるのかってなっちゃったりとか、いろんなアンハッピーなことが起こります。

広岡:そうすると、リクルートさんとかって、さっきのNewRINGはやりたいことを挙げるんだと思うんですよ。染み出しっていうのは、どういうふうにバランスを理解すればいいですか?

細野:染み出しはテーマありきですね。やりたいこと2、テーマの重みが8くらいのバランスです。染み出しはやっぱりどうしても既存事業シナジーを狙わなきゃいけないので、そこの巧妙な設計とかがないと、やっぱり経営者が管理しないとなかなかうまくいきません。

広岡:染み出しを狙うときって、誰が言い出しますか?

細野:染み出しは、けっこう役員クラスが言わないと。

広岡:やっぱりそうですか。要は、上が先に目的を持つ?

細野:やっぱり上司がそこに石を置きにいくのだって、ある程度リソース割いて2年は粘るとか、けっこう意思決定をしながらそこにはりに行かないと、染み出しとてぱーんってうまくいくわけじゃないので、それだけ潜る覚悟を持った経営者が狙いに行かないと、なかなか耐えきれないっていう。

広岡:次、山田さんの話を聞きたいんですけれど、山田さんはどっちかというときちんと宣言をするというか、あまり隠したりするイメージがないんです。たぶん当時自分が担当者だったときとかって、この割合ってどういうイメージでやっていたんですか?

山田:まず僕自身は、キャリアのスタートが新規事業で、やりたいことをやったら大幅に失敗しました。これは会社の器にもよるんですけれど、当時うち上場した直後なのに赤字になったという最悪なパターンで、なのに新規事業を新卒で1人だけやっていて、すごく白い目で見られたので、やりたいことをやっても成功しないから、とりあえず稼いだほうがいいな、みたいなマインドの入れ替わりがありました。

今どう考えているかというと、結論的にはやりたいことをやらせるのはあまりよろしくないので、会社としてやるべきことを、やりたいことだと勘違いさせるように努力する(笑)

広岡:上側の努力としてね(笑)

山田:けっこうあるかなと思っていますね。やっぱり新規事業をやりたい人って、自己実現したいみたいな、成功してぶち当てたいみたいなのが強いケースがあって。じゃあその手段って本当に今言っているやつなの?とかって問いただしていくと、意外とそうでもなかったりするので、もうちょっと当たりそうな、これとかこれとかにしようよ、みたいな感じでダウンミーティングをつんでいくと、気付くとそれがやりたいことになっているみたいなパターンが多いんじゃないでしょうか?僕としてはそういうほうにうまくやりたいなと思っています。

広岡:確かにそう言われると、担当者と会社がそもそも目標が合わないと、それは進まないですよね。

計画は上の立場の人が責任を持って書く

広岡:次のテーマを変えます。次は、新規事業の計画についてです。新規事業に期待する売上高っていうのは、最初に設定すべきかどうかと。この判断って会社によって毛色が違うと思うので。どうですか?
山田:僕らは、けっこう新規事業とか事業立ち上げができる人材があまり多くないという前提なので、会社として数字を積むというよりかは、そういうのができる人を増やすみたいなところが実はミッションになっています。そのため最初にいつ・いくら売上をつくるかみたいな予算プレッシャーはないです。ですが、例えば小さいことをやってもしょうがないので、最終的にある一定の利益が出そうな絵を書けるか書けないかみたいなところは、一応厳しく精査するのはやっています。
広岡:じゃあ次、DeNAさんに聞きたいんですけれど、要は数字を現場にどれくらい求めているか。要するに上がつくるビジネスは、たぶん数字を取りに行っているんだと思うんですよ。さっきの車とかっていうのも、あんなの100万の売上のためにやっているわけじゃないから、相当潜っていって、出るんだったら本当数千億円とかの世界で花開くよねというのが、たぶんテーマだと思うんですけれど、実際に現場で事業をつくる側からすると、会社からなんて言われていますか?
若宮:数字については、市場の成熟度に応じて求める粒度が変わると思います。例えばゲームとかだと一定成熟してるのでしっかり計画達成率でおっかけます。すでにprovenになり始めているような市場をとる場合も、すぐにレッドオーシャン化したりシェア勝負になるので、アセットを使ってがんってやるためにも計画ベースで予算取りしておかないとスピード感でない。

でも新規の場合、狙うべき数字を当てるのも難しいところがあって、だいたい既存市場の規模とかから見立てたりするんですけど、これが外れることが多い。ドコモでヘルスケアをやっていたときにも、機器メーカーからgoogleとかOSレイヤーまでみんな同じ絵を書いてヘルスケア参入してたんですよね。ヘルスケア市場はうん兆円あるぞとか、社会的課題があるぞ、みたいなことで。だけど既存産業が大きくてもモバイルヘルスケアのニーズがない、もしくはまだニーズ開発ができていなくって、結果ほとんどのプレイヤーが小さい売上すら立てられなかった。

逆にfacebookとかAirbnbとか、既存市場の規模からはじいて狙ったサービスじゃないけど、それがものすごい伸びて市場を作っちゃう可能性ってあるじゃないですか。だからさっき飛び地っておっしゃったみたいなド新規、本当に市場もまだないゼロイチっても張っておいたほうがいい部分はあると思うんですが、こういうド新規こそ売上計画とか考えても無理っていうか、ほとんど意味ない。よく皆さんたぶん、マネタイズ言われて売上とか黒字化年度とか何回もゴールシーク的にお絵描きした経験あるんじゃないかと思うんですけれど(笑)、ゼロイチの段階でそういうの書いてもほんと意味ない。ゴールドリブンじゃなくて、今の成長率とかを微分的にちゃんと見る方が大事。最初は、アクティビティがどれくらいあってっていうのを見て、でユーザー数がついてきて、そしたら売上を考えて、利益はさらにそのあとくらいの、スタートアップだとそういう段階的な巻き取り方ですよね。なのでほんとのド新規の場合、お絵かきでしかない計画との予実はやらないほうがいいって思います。

広岡:リクルートさんはどうですか?さっきの飛び地と染み出しで、両方分けて話してもらっても全然問題ないですけれど。
細野:飛び地のほうは、いわゆるステージゲート法みたいなやつでやっているんですけれど。
広岡:一声で100億っていうのは聞いたことがあるんですよね。
細野:ぐらい目指そうよっていうのでやっているんですけれど。最初にというか、ステージ超えながら確認しながら進めるというやり方なので、最初にそのくらい狙えるマーケットでこいやっていうテーマ設定はしているけれど、別にその絵が書けてないからって、第1ステージ通させないとかではないような中庸なやり方でうまくやっている。
広岡:染み出しは?
細野:染み出しは、一応書きますね。そこの染み出しにどのくらいの社数取り込むと、どういう本業には影響があって、みたいなのはもちろん書く。
広岡:書く?
細野:書かないとリソースをぶっ込めないので。リソースぶっ込むために書く。
広岡:それでは、正直事業の仮説の角度が全然高くなくてもとりあえず書く?
細野:そう。だから上の立場の人が書く。下が書くと、それは本当にどのくらいの確率でくるんだってなるから。
広岡:要は、お前の責任でこれをやるんだなっていう状態にしなきゃ無理だっていうことですね。
細野:そんな対して確率がないのにあげてきたら大体跳ね返すから、それはやっぱり上が責任を持って、ある程度リスクを明確にしながら、はったりもかましながら、役員が座った目で言うみたいなところで。それが、さっきリソースで投資するとかって。2番手戦略だとしても、それをそれだけ投資したことで、本当に取れるかどうかわからないけれどやるんだということを表明してもらいます。
広岡:要するに、立案者が上の方になるのか。
細野:じゃないと、リソースぶっ込めないし。
広岡:ということですよね。
細野:やっぱり同じ案だと、下からくると、それは本当に大丈夫なのか?ってなってしまうことが多いです。さっき、起案者の方にやりたいと思わせる企画で、こっち側が、役員側がやるっていうふうに思わせないと染み出しは難しいかなと。

広岡:これは確かにそうかもしれませんね!

まとめ

いかがでしたでしょうか?ここまでの話をまとめると、新規事業は既存事業とのシナジーを狙った染み出し領域と、既存事業とは全くことなった飛び地領域の2つに分けて考えるということを先端企業の社内スタートアップでは実施しているとのことでした。さらにそれぞれの領域に合わせて、組織体制や計画などを分けて考えているようです。

この「先端企業に学ぶ最新の社内スタートアップ成功のイロハ #1」勉強会のパネルディスカッションの続きは後日の記事で紹介したいと思います。
次回記事のテーマは、「新規事業に向いている担当者のパーソナリティ」「M&Aと提携をどう使い分けるべきか」についてレポートします。