勉強会のまとめ Part 2 

2017年7月10日

こんにちは、GHS広岡です。

勉強会の続きをUPします。

2番目の登壇者である細野氏は、リクルートエージェントという転職サービス会社にてIT活用を進めた結果、売上を2年間で数十億伸ばした経験をお持ちです。

その時の成功体験から「サービス立上げや成長に対するイノベーション創出」と「それに対する既存の組織論の弊害」を絡めてそのノウハウを伝授してくださいました。

新規事業のマネージメントやプロダクトマネージャーの皆様にはとても貴重なノウハウかと思います。

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1 新規事業開発のやり方

いくつものアイデアを同時に検討すれば、実現可能なものが生まれやすい

まず新規事業開発のほうからお話します。通常新規事業は、何をやるかだけでなく、どうやってマネタイズするのかまで仮説を立ててからMVPを作り、そこから仮説検証をまわしていくというやり方を用います。

しかし実際やってみると、企画途中の段階でビジネスモデルキャンパスが書けたことに満足してしまい、見切り発車をしてしまうケースが多いです。しかし、どうやってマネタイズするのかまで考えが及んでいないため、後々いろいろな問題が出てきます。

そもそも、素晴らしい事業アイデアが浮かぶ確率はよくいっても100分の1程度しかないと考えています。私が必死に考えても20分の1ぐらいの確率ででればいい方。よって検討するアイディアの数が重要になってくるので、現在は6人のメンバーに1人3個ずつアイデアのボールを持たせ、同時進行で検討をさせています。そうすると、一度に18個のアイディアの検討を進ませることができます。もちろん、各々のアイデアがどうすれば成り立つのかをメンバーだけでなく、私も真剣に考えます。そうすることによって20個に1個くらい、事業内容からマネタイズプランまで整う、素晴らしいアイデアが生まれてきます。

次に、思いついたアイデアに対するMVP(minimum viable product)を企画させ、そこから検証を始めます。

実際に事業アイディアになるものは半年に1個成り立つか成り立たないかくらいの確率ですので、当然「全然リリースができていない」という不満がメンバーから出てきます。また「これでいいんだろうか」と不安になってくるメンバーもいます。そのため、メンバーに渡す三つのボールのうち、一つは私の中でずっとあたためてきた「これならばいけるだろう」というアイデアにしモチベーションを保たたせ、あとの二つはチャレンジさせています。

2 既存事業開発のやり方

業界の構造が変わるようなアイデアを出し、それを実装するための方法を考える

次に、既存事業のほうです。

今自分が事業管理しているリクナビNEXTですが、まず「どんなイノベーションが起きたら業界の構造が変わるか?」、という視点で考えたチャレンジングイノベーションのお題をメンバーに振ります。

だいたい3、4個振ると、1個くらいは「それ、面白いね」というアイデアが生まれてきます。例えば「職種を検索しなくても、自分に合う転職先の候補がたくさん出てきたら面白い」というような感じです。このようなアイデアが出てきたら、「どうしたら実装できるか?」を含めて検討させます。このプロセスを繰り返すとたいてい、何か一つは実現可能なアイデアが出てきます。

出てきたアイデアはすぐに公表しません。それらのイノベーションアイデアをサービスに仕込んでステルス実験をしています。そして浮かんできた実現可能なアイデアを経営サイドに提出します。

その後も同じくステルスで、次の観点からのイノベーションのアイデアをサービスに放り込み検証していきます。このように進めていき実現可能な事業の成長ストーリーが見えてきてから後付けであたかも最初から考えていた成長ストーリーのように発表するというのが私の既存事業イノベーションやり方です。

一般的には「未来、方法の順番」が多いと思いますが、それでは先に立ててしまった根拠のない未来に縛られてしまうので、「方法、未来の順番」で考えるようにしています。これを1年ほど時間を掛けながら進めていき、この大きな矢印をあたかも最初から描いていたかのように、一つ一つイノベーションを積み重ねていきます。

私は一昨年就任してから、会社に対して1年間は公式に戦略発表をしませんでした。最初は「まだ描けていません」と回避し、途中経過をうまく公表しつつ、最後には「実はこういうストーリーでした」とすべてをまとめる。既存事業は経営サイドも注視している対象となります。予算の作られ方など想像してもらえばご理解頂ける通り、経営サイドは未来を早めに想定したがるものですが、実際の事業の成長には足元の検証の積み重ねが重要という点が相反します。よってこういうイノベーションオリエンテッドな後付けストーリー戦略を実施しています。

3 イノベーションマネジメントのポイントは六つある

連続的なイノベーションをスムーズに行うために重要なこと

一つ目が初速伴走です。

これはとても大事です。新人に仕事を丸投げするのではなく、最初の2、3歩目までは「どうすればこの事業アイデアが成り立つと思う?」と一緒に考えることが重要です。成り立つことを阻害している一番大きな壁を一緒に見つけ、それを乗り越える方法の見当がついてから、はじめて1人で企画してもらいます。これを怠ると、新人はほとんど発芽せず、一つ目の壁に当たってくじけてしまいます。

二つ目は企画のブランド化です。

大きな企業では、一つ一つの案件のROIを厳しく問いただされます。それは仮説検証型で進める連続的なイノベーションの妨げになるので、少し工夫しなくてはなりません。私は案件をブランド化するためにシリーズ名を付けています。そのシリーズ名を付けた最初の案件を小さくてもいいから必ず成功させると、次に仕込みたい案件をシリーズ第2弾としてすることで、ROIを細かく問われることなくスムーズに企画が通ることがあります。「第1弾がうまくいったから、第2弾もうまくいくだろう」というバイアスが掛かるんですね。

三つ目は開発予算をまるっと、ということです。

先ほど申し上げたROIに関わってきます。投資マネジメントが厳しくなってくると「この機能はいくらで、リターンはどのくらいですか」と細かく問われるようになります。これを回避するために、先ほど言ったブランド化が役に立ちます。シリーズの第1弾が成功した後「このシリーズはうまくいきそうなのでその先いくつかのシリーズまでの予算をください」と申し入れ、一定量の予算をもらいます。予算が出た後は内部の機能ごとに自由にふり分ければよいのです。

四つ目はマスタープランの意図的不在です。

今は不確立な時代で、競合はどんどん出てきますし、カスタマーがどう反応するかも分かりません。ですから、マスタープランは最初から作らず、起案なしの小さな実験を繰り返していきます。うまくいった実験を少しずつ公表しながら、あたかも戦略を描いているように見せていきます。成功した実験が四つくらいになるとなんとなく筋道が見えてくるので、おそらく未来はこの方向だろうというのを描き、まとめて見せます。今の時代の正しい戦略の描き方だと思っています。

五つ目は、定例・パワポの禁止です。

気になったことや問題点があれば、その都度質問してその場で解決します。すぐに次の段階に進めるよう定例会議は開きません。また、パワーポイントの作成も禁止して必ず手書きで提出してもらいます。

パワーポイントで企画書を作ってしまうとそれがひとり歩きし、それぞれの勝手な解釈が飛び交い、勘違いしたまま物事が進んでしまうことがあるからです。事業アイデアが描けて、議論が必要なときにだけパワーポイントを作成します。パソコンと向き合うのは、Validation Sheetという進理用のシートを使って実験の進捗や結果の共有をするときだけですね。もっとも重要なことはカスタマーに会いに行ったり、仮説を検証したりして頭を使うことであり、資料作りではありません。

Validation SheetにはKPIや検証仮説をすべて打ち込み、私が週次でチェックし、コメントを書きます。私だけがチェックをするとチームが成長しないので、私以外のチームメンバーだけが集まって相互に読み合わせてレビューをさせています。そうすると、お互いの実験の精度や結果に対していろんな意見が出るので、だんだん全員のレベルが上がっていきます。

最後の六つ目は、育成・評価です。

過去まず40人くらいでリーンについての研修を実施しました。その後、スキルを明確化させ、それと評価を連動させました。また、1人に対して1案件だけしか持たせないのではなく、三つほどの案件を持たせ、案件に対する執着心を分散させました。そして一番大事なことは、完全プロセス評価です。リクルートは成果主義ですが、それは営業などの業績に対しての努力の相関が明確な職種の人たちに向いている評価方法だと思っており、企画はプロセスで評価をしないと新しいことを考える努力がなくなります。

つづきは、後日公開するPart 3で。

【細野真悟】
リクナビNEXT編集長。当初はNEXTの開発ディレクションを担当。その後商品企画に異動し、さまざまなサイトの改善、新商品の考案などを行う。

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